治療支援部門
放射線科
放射線治療(リニアック)

当施設は埼玉県がん診療指定病院として、患者さんが安心して治療を受けられる体制を備えています。「がん治療センター」が設置され、PET-CT検査をはじめ化学療法専門の治療室や、緩和ケア専門外来を開設し、がん全般に対応するがん相談支援センターも整備されています。
2015年10月にがん治療センター内に放射線治療装置リニアックCLINAC-iX(VARIAN社製)を導入し、放射線治療医による根治的照射(完治させる)、緩和的照射(苦痛を抑える)、予防照射を行っています。
現在は通常の治療に加え、高精度放射線治療(IMRT、定位放射線照射)も実施しており、放射線治療医および医学物理士が最適な治療計画を作成いたします。
当院のリニアックには、X線・電子線合わせて7種類のエネルギーが搭載され、病変に応じた最適なビームを選択できます。また、5~10mm幅のマルチリーフコリメータが装備されており、病変の形状にあった治療ビームの作成が可能です。画像照合用のX線管球も搭載されており、高精度に位置合わせを行うことができます。
ただし、精度の高い装置を導入しただけでは、高精度で安全な治療を患者さんに提供できるわけではありません。日本では2000年代から複数の放射線治療関連事故が発生しており、その機器の精度管理が重要視されるようになってきています。当院では、医学物理士、放射線治療品質管理士、放射線治療専門放射線技師の資格を持ったスタッフが日頃から精度管理を行い、安全・安心で質の高い放射線治療を提供いたします。
さらに近年では、放射線治療関連事故防止のため、第三者機関によるリニアック出力の確認が推奨されるようになり、当院も精度管理の一環として、第三者機関によるリニアック出力の確認をおこない、証明書もいただいておりますので、安心して放射線治療を受けていただくことができます。
放射線治療とは
がん治療には大きく分けて、手術療法、化学療法、放射線療法の3種類があり、その中から患者さんに最も適した、有効な治療法を選択していきます。
放射線治療はエネルギーの高い放射線(エックス線や電子線)を体外から照射し病巣部の細胞内にある遺伝子(DNA)にダメージを与え、
細胞を死滅させたり、がん細胞分裂の進行を抑えたりする治療法です。そして、放射線治療には大きな利点が3つあります。
① 他の治療と比べて肉体的負担が少ない(切らずに治す)
② 機能・形態を温存しながら行える(低侵襲)
③ 全身状態がよければ、外来通院で行える(治療中・治療後の生活維持が可能)
また、放射線治療新患者数は、全国で2007年に18.2万人、2010年で25万人、2015年には27万人と増加の一途であり、当院でも増加傾向となっています。
放射線治療の対象疾患
| 悪性腫瘍… | 脳腫瘍(原発性、転移性)、頭頸部癌(喉頭癌、口腔癌、咽頭癌など)、肺癌、縦隔腫瘍、食道癌、乳癌、胃リンパ腫、前立腺癌、子宮頸癌、直腸癌、膀胱癌、脊髄腫瘍、皮膚癌、骨軟部腫瘍、悪性リンパ腫、骨髄腫、(肝胆膵臓癌の一部)など |
| 良性疾患… | 甲状腺眼症、ケロイドなど |
乳がんの放射線治療
当院では乳がんの患者さんに安心して治療を受けていただくために、女性スタッフが必ず1人は照射室に入り準備を行います。
また、他施設では上半身は、着衣をせずに放射線治療を行っていることが多いですが、当院ではマンマウェアをご着用いただくことができます(自費での購入となります)。これによって、放射線治療時の肌の露出を最小限にすることが可能です。
マンマウェアのイメージ図
写真提供:(有)クオリタ
放射線治療では、皮膚に直接印を書くことで位置合わせを行います。当院では、乳がんの放射線治療時にUVスキンマーカーを使用しております。このマーカーはオレンジ色で肌色に近く、従来使用していた紫色の皮膚マーカーと比較すると、色が目立ちにくくなっています。照射室でブラックライトを当てるとマークが浮かび上がりはっきり視認できます。さらに色落ちしにくいため、マークが消える心配も少なくなっています。
当院では他院で手術を受けた方の放射線治療も実施可能ですので、ご希望の方は、かかりつけの先生にご相談のうえ、先生から病診連携室までご連絡いただくようお願いいたします。
前立腺がんの放射線治療
前立腺がんに対する放射線治療は標準的な治療の選択肢の1つであり、手術とほぼ同等の治療効果が期待できます。
最近の研究では、1回あたりの放射線量を増やして全体の治療回数を減らす寡分割照射でも、副作用を増やすことなく、従来の通常分割照射と同等の効果が期待できることが示されてきています。
当院では、中等度寡分割法(合計20回照射)を導入しており、治療期間を従来の約2か月から約1か月へと短縮できるようになっています。後述のIMRTやSpaceOARと組み合わせることで、より安全性の高い治療の提供に努めています。
IMRT
強度変調放射線治療(IMRT:Intensity Modulated Radiation Therapy)とは、照射中にマルチリーフコリメータを移動させて照射範囲の放射線に強弱をつけることにより、周囲の正常組織の線量を抑えつつ腫瘍部分に放射線を集中して照射できる照射技術です。これによって、従来法では不可能であった理想的な放射線治療が可能となり、腫瘍制御率の向上や副作用の低減が可能となります。
<当院で行っているIMRTの紹介>
前立腺がんの放射線治療ではIMRTを行うことで、高線量の範囲(下の画像の赤色部分)を前立腺の形に合わせることができるため、前立腺の隣接する膀胱や直腸の線量を減らしてより安全で効果の高い治療が可能です。
*当院では、さらにSpace OARと金マーカー留置を組み合わせることで、更なる高精度放射線治療が実施可能です。
定位放射線照射
定位放射線照射:STI(Stereotactic Irradiation)とは、限局した小さながん病変に対して、いろいろな方向から放射線をピンポイントかつ正確に照射する技術です。
従来の放射線治療よりも大きな線量を短期間に照射できるため、1回あたりの治療時間は長くなりますが2~5回の短い日数で治療することができます。
定位放射線照射はオリゴ転移(限局性の少数転移)、転移性脊椎腫瘍、肝臓、肺、腎臓、脳などの腫瘍において高い治療効果が認められております(局所制御率・生存率の向上、疼痛緩和効果の向上など)
<当院で行っている定位放射線照射の紹介>
転移性脊椎腫瘍では下の画像に示したように、脊髄という大事な神経の近くを照射することとなります。当院ではIMRTの技術を組み合わせて、脊髄を避けつつ腫瘍に高線量を照射しています。
呼吸性移動対策
肝臓など胸腹部の腫瘍の場合、呼吸により腫瘍が体の中で常に移動しており正確に狙いを定めることが難しくなります。呼吸による位置の変動が大きい場合、当院では指示に合わせて息を止めていただき、その間だけ放射線を当てる息止め照射を実施しています。息止め照射により、周囲の正常組織にはなるべく放射線を当てずに、正確に腫瘍部分だけを狙って照射することができます。
また、息止めの状態で治療計画用のCTを撮影することで、正確な照射範囲の設定が可能となります。
緩和的放射線治療
緩和的放射線治療は、がんの転移による痛みの緩和や、がんが引き起こす様々な症状を軽減し、患者のQOL(生活の質)を維持・改善することを目的としています。
1回から数回程度の短い期間で治療を行うことができ、当院では、通院可能な方に対する緩和的放射線治療にも対応しております。過去に放射線治療を受けた部位の疼痛が再燃した場合も、再照射により疼痛の緩和が得られることがありますので、ぜひ当院の主治医にご相談ください。
当院では、がんによる苦痛の軽減に力を入れており、連携室では地域の医療機関からの緩和的放射線治療の依頼にも対応しております。速やかな治療開始につなげられるよう努めており、2025年度はご紹介いただいた患者さんの4人に1人が初診同日に放射線治療を受けられ、初診から3日以内に全ての患者さんが放射線治療を開始しております。
下表は、緩和的放射線治療の適応や成績についてまとめたものとなります。
緩和的放射線治療の詳細については、日本放射線腫瘍学会のホームページ(JASTRO緩和的放射線療法)をご参照ください。
SpaceOAR
前立腺と直腸は隣り合っているので、前立腺に照射すると、高線量の放射線が照射される範囲(高線量域)が直腸に重なってしまいます。
ハイドロゲルスペーサー(SpaceOAR system®)とは、前立腺と直腸の間にハイドロゲルを挿入するものです。ゲルの挿入により直腸が前立腺から遠ざかれば、高線量域が直腸に照射されるのを防ぎ、直腸の副作用を減らすことができます。
放射線治療の2週間ほど前に、前立腺癌の会陰部から、前立腺と直腸との間にゼリー状の物質(ハイドロゲルスペーサー)を注射しスペースをつくります。注射の前には麻酔をします。
日本放射線腫瘍学会編 「前立腺がんに対する放射線治療におけるSpaceOAR システムの適正使用指針」より
下図のように、ハイドロゲルスペーサーは挿入後、放射線治療期間中(約3カ月)は、そのスペースを維持し、その後体内へ吸収され消失します。
Boston Scientific HPより
担当医
-
-
科長(治療) 大森 義男(おおもり よしお)
【プロフィール】
【資格】
医学博士
日本放射線腫瘍学会および日本医学放射線学会放射線治療専門医
日本核医学会核医学専門医
日本核医学会PET核医学認定医
日本脳神経外科学会脳神経外科専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本医学放射線学会研修指導者
第1種放射線取扱主任者
厚生労働省 医師の臨床研修に係る指導医講習会修了
厚生労働省 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
アミロイドPET読影講習会 Flutemetamol読影コース修了
難病指定医
身体障害者福祉法第15条指定医師(肢体不自由)
介護支援専門員
-
-
酢谷 真也(すたに しんや)
【プロフィール】
【資格】
日本放射線腫瘍学会および日本医学放射線学会放射線治療専門医
日本専門医機構・日本医学放射線学会認定放射線科専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本医学放射線学会研修指導者
厚生労働省 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
外来担当医
| 時間/曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 午前受付 8:00-12:00 (診察) 9:00~ |
||||||
| 午後受付 12:35-17:00 (診察) 13:00~ |
酢谷 真也 6月~【予約制】初診のみ |
酢谷 真也 6月~【予約制】再診のみ |
大森 義男 【予約制】初診のみ |
大森 義男 【予約制】再診のみ |
当院で治療を希望される場合には、現在おかかりの医療機関より当院病診連携室にご連絡ください。