専門治療
がん治療について
化学療法の部屋
がん化学療法を受ける方のために / 抗がん剤治療に関する疑問
抗がん剤治療に関する疑問にお答えします。
がん化学療法とは何ですか?

がん化学療法とは手術や放射線治療と共にがんに対し行われる治療方法のひとつです
化学療法は正しくおこなえば安全で有効な治療法であることがわかっています
この治療法を正しく理解することによりがんに対し積極的に取り組むことができ、副作用が起こった時にそれに耐えることができるようになります
化学療法を正しく理解するには、まず「がんとは何か」を理解しなければなりません
人間の体は小さい細胞がたくさん集まってできています
正常な細胞は正常な調節のもとで分裂し増えたり死んだりし全体として恒常性を保っています
正常な調節を逸脱し細胞がどんどん分裂増殖していくようになったのががん細胞です
がん細胞は血流やリンパの流れを介し全身に広がっていきます
化学療法はより速く分裂増殖する細胞を死滅させる働きがあります
がん細胞は正常細胞よりも分裂増殖が盛んなため化学療法で選択的に死滅させることができます
しかし、皮膚、骨髄、胃腸粘膜なども細胞分裂が盛んなため、これらの臓器にも副作用が現れやすくなります
化学療法の目的は何ですか?
がんの種類や進行度によって化学療法の目的は異なります
がんを完全に治してしまう
(しかし、化学療法のみでがんを完全に治すことは困難な場合も多いです)がんの再発を防ぐ
がんの進行を遅らせる(延命)
がんにより起こる痛みなどの症状を和らげる
治療に際してはあなたの化学療法の目的を主治医にお尋ねください
私の場合、化学療法が唯一の治療方法ですか?
場合によっては化学療法があなたにとり唯一の治療法かもしれません
しかし、化学療法が手術や放射線治療と併用療法としておこなわれる場合も多いでしょう。その目的として3つの場合があります。
手術前にがんを小さくし手術の治療効果をあげる(術前化学療法といいます)
手術のあとで残っているかもしれないがん細胞を死滅させる(補助化学療法といいます)
がんが再発した時、放射線など手術以外のいろいろな方法と併用して治療する
あなたが医師や看護師に聞く質問例
私のがんの化学療法の目的は何ですか?
化学療法が効く見込みはどうですか?
化学療法を受けたら、-私は治りますか?-寛解しますか?-症状が楽になりますか?
同じ目的のために他の治療法はありますか?
化学療法が効いているかどうかどのようにして知りますか?
もし今の化学療法が効かない時は他の治療方法はありますか?
私に使用されている抗がん剤の副作用と危険性は?
私の化学療法のやり方や期間を教えてください
どこで化学療法を受けますか?
化学療法を受けるための準備や、副作用を減らす方法がありますか?
食生活、日常活動、運動、仕事、性生活が制限を受けますか?
今後、手術や放射線治療その他を受けることがありますか?もしそうなら、それはいつ、どこでですか?
化学療法の費用はどのくらいになりますか?
どこでがん化学療法を受けられますか?
あなたの病状や社会的環境、ご希望により異なります
入院して化学療法をおこなう場合
長期間入院して化学療法をおこなうことは最近はあまりいたしません。入院により社会生活が妨げられるからです。外来に来て外来化学療法室で化学療法をおこなう場合
このパターンが最も多いと思います。入院中の化学療法からこのパターンに切り替えることも多いです。他院でおこなう場合
他院に依頼してこちらの化学療法をしていただく場合と、他院に治療方法を任せる場合があります。ご家庭でおこなう場合
経口抗がん剤(飲み薬)の場合は通院しながらご家庭で服薬していただきます。
化学療法はどのくらいの頻度で、どのくらい続きますか?
まず、がんの種類や治療目的によって化学療法の種類が異なります
化学療法の種類によって投与間隔や期間が異なります
投与期間は、手術により病変が切除された後おこなう「補助化学療法」では、術後約1年前後をめどに行います
手術の有無に関わらず、がん病巣が体に存在している場合は投与期間はさらに長期間に及ぶことが多くなります
抗がん剤について教えてください
対象のがんの種類により効果のある抗がん剤の種類も異なります
1種類の抗がん剤を用いる場合や、数種類の有効な抗がん剤を組み合わせて使用する場合があります
私の抗がん剤の種類や投与方法はどのようにして決めていますか?

がんの種類によって抗がん剤のレジメン(どの抗癌剤を組合わせどのように投与するか)は異なります
有効性が科学的に証明されているレジメンの中から最も効果的と思われる方法を選択するのが基本です
腎臓などの臓器障害の有無や年齢、体力も考慮します
体力を消耗し過ぎる治療はかえって逆効果になる可能性がありますし、また、長期間継続する治療の方が有効性が高いと考えています
最終的に、治療方法はあなたにご相談させていただいた上で決めます
副作用や効果など実際にやってみた上で不都合があれば適宜相談の上レジメンを変更させていただきます
抗がん剤はどのようにして投与されますか?
安全な静脈注射するためのリザーバーを用います。
カテーテルを上大静脈に挿入し接続したリザーバーを胸の皮下に埋め込みます


抗がん剤治療中、他の薬は飲んでもいいですか?
抗がん剤の種類により同時にのむと危険な薬剤があります
胃癌や大腸癌で使用されるティーエスワンという経口抗がん剤は5-FUやユーエフーティやフルツロンと併用できませんし、過去7日間以内に使用されていても危険です
5-FU、ユーエフーティ、フルツロンなどは抗ウイルス剤ソリブジン と併用すると危険です
市販薬も含め他の薬をのむときは主治医にご相談ください
市販の免疫療法剤は併用してもいいですか?
アガリクス、サルノコシカケ、プロポリスなどのいわゆる民間療法剤の中でがんに効く科学的根拠のあるものはありません(つまり効果はありません)
これら民間療法剤の中には有害なものも多いと思われ使用するべきではないと考えられます
もし、免疫療法剤で科学的に効果が証明されており保険適応となっている薬剤(レンチナン、クレスチン)の使用をご希望の場合は主治医にご相談ください
ただし、免疫療法剤は必ず抗がん剤と併用することが必要です(免疫療法剤単独で有効かどうか科学的に証明されたものは今のところありません)
なぜ抗がん剤は副作用を起こしますか?
抗がん剤はがん細胞のように速く成長する細胞を攻撃します。しかし、抗がん剤は全身にまわりますので正常細胞の内、成長速度が速い細胞も障害を受けます。これが副作用の原因です。
体の中で成長速度が速い細胞の臓器は血液を造る骨髄、毛嚢、口腔粘膜、消化管粘膜、生殖器などです
また、抗がん剤の種類によっては副作用が心臓、腎臓、肺、神経系などに強く出ることがあります
場合によっては、副作用の発現を抑える薬剤が利用できることがあります
抗がん剤の副作用にはどのようなものがありますか?
あなたが副作用について疑問をもったら主治医、看護師、薬剤師にお聞きください
抗がん剤に共通する代表的な副作用は
嘔気、嘔吐
脱毛
出血傾向、あざ
貧血
感染症(肺炎など)
食欲不振や体重減少
その他の副作用は
腸管の問題 (下痢、便秘、腹痛など)
口腔、歯ぐき、のどの痛み
神経や筋肉の問題
皮膚乾燥
腎障害や膀胱の刺激感
性的能力や受胎能力
副作用で覚えておいていただきたいこと
同じ化学療法でも人によって副作用の強さや種類は異なります
抗がん剤の添付文書や一般の解説書に書いてある副作用が全て現れるわけではありません
そこには非常にまれな副作用についても書いてあるでしょうが、万一起こると危険なもの、緊急の対処が必要なものも含まれています
主治医は事前に主な副作用の説明はいたしますが全てをお話できるわけではありませんので、自分の症状について疑問を感じたら主治医や担当看護師にご相談ください
副作用は大なり小なり出現するでしょうが私たちと共同でそれらに対処し、がんを治療しましょう
どのくらいの間、副作用は続きますか?
たいていの副作用は治療が終わると次第に消えていきます
ただし副作用の症状が消えるのにどのくらいの時間がかかるかは個人差がかなりあります
副作用によっては回復するのに数ヶ月以上かかる場合もあります
腎臓、骨髄、肺などにある程度の、しかし永久的な機能低下をきたすこともあります
あなたは化学療法やその副作用がどのくらい続くのかしばしば疑問をいだいたり失望することがあるかもしれません
このような時は主治医にご相談ください
化学療法中、仕事や家事はできますか?

以前に比べ化学療法は外来通院しながらおこなうことが多くなっています
これは、家庭生活や社会生活をできるだけ続けていただくためです
時には倦怠感や嘔気などの副作用のため仕事や家事に差し支えることがあるかもしれません
しかし、私たちはあなたができる限り仕事や家事など日常生活が続けられるよう副作用のコントロールに努めます
そのためには私たち医師、看護師とあなたの協力が必要です
お酒は飲んでもいいですか?
お酒は肝臓や腎臓などで代謝されます
たくさんお酒を飲んだ翌日は体がだるいのを経験されると思いますが、これはこれらの臓器に負担がかかっているからなのです
抗がん剤も肝臓や腎臓で主に代謝されそれらの臓器に負担がかかりますのでお酒を飲むことは原則としては好ましいとは言えません
特に副作用の強い化学療法を受けているときはお酒は控えていただきたいと思います
ただし、食欲がない時、好みで少量のアルコールはあなたをリラックスさせ食欲をわかせます
性機能や妊娠について
化学療法が性機能や受胎能力を傷害する可能性はありますが必ずというわけではありません
これらへの副作用は抗がん剤の種類、年齢、健康状態によって異なります
男性では
精子の数の減少や運動能力その他の異常が起こりえます。これらは一時的、または永久的な不妊の原因となり得ます。
もし必要ならば将来のため精子保存することも考慮しなければなりません
また、抗がん剤は精母細胞の染色体への危険性(催奇形性)があり化学療法中に子供をつくることは避けるべきです
女性の場合、化学療法が卵巣に障害を与え女性ホルモンが減少するかもしれません
その結果、下記の副作用が出現するかもしれません
月経周期が不規則となったり月経が消失する
閉経時の症状、すなわち顔面紅潮、灼熱感、膣乾燥症などが出現するかもしれません
性器感染症を通常より起こしやすくなります
化学療法種類や期間によっては不妊症をきたす可能性もあります
もし必要ならば主治医や産婦人科医師に早めにご相談ください
妊娠は化学療法中も不可能ではありませんが、化学療法は出生異常をきたす可能性がありお薦めできません
医師は化学療法中は避妊するよう助言しています
もしがんが見つかった時に妊娠していたら出産まで化学療法を延期できるかもしれません
女性がもし急いで化学療法を必要としている時は胎児の特に危険性の高い妊娠3ヶ月を過ぎてから化学療法を開始するかもしれません
しかし、場合によっては、妊娠中絶を考慮しないといけないこともあります
もし、あなたやパートナーが化学療法後の妊娠を希望しているときは主治医にご相談ください
副作用がきついので化学療法を止めたいと思ったら
もしも化学療法の副作用がきついので続けられないと思うようになったら、勝手に止めず主治医にご相談ください
主治医は、副作用に対する対策が十分取れていたかどうかをまず尋ねるでしょう
十分な副作用対策にもかかわらず副作用がひどい場合には回復のための休薬期間を設けたり抗がん剤を減量したりするかもしれません
副作用の強さだけでなく、長期にわたる化学療法に飽いて止めたくなる場合もあるかも知れません。その時は主治医と一緒にもう一度、今おこなわれている化学療法の目的とその経過について確認しましょう。時には当初の目的が変わってきていることもあります
化学療法の選択肢が複数ある場合もあります。期待する効果だけでなく副作用も考慮して最適の治療法を選びな直さなければならない場合があります
化学療法はあなたが主体的に受けるものです。主治医はあなたのために適切と考えられる治療の選択肢をひとつ以上提示し、治療をするしないも含め最終の決定はあなたご自身がおこないます
医師・看護師・病院が化学療法に関しすること
主治医は
あなたに化学療法が必要な理由についてご説明します
化学療法がどのようなプランで進められて行くかご説明します。化学療法に選択肢がある場合にはご説明しあなたと相談して決めます
外来にあなたが来る度に診察や血液検査などで副作用や全身状態を調べ化学療法が可能かどうか判定します
治療効果をCT、腫瘍マーカー(血液検査)、内視鏡検査、PET-CTなどを用いて定期的に評価します
副作用や効果に問題があれば治療方針をそのつどご相談します
時間外に緊急を要する副作用が発生した時は時間外の担当医が対応します
外来化学療法室で看護師は
あなたに化学療法の実際についてご説明します
副作用や対処法についてご説明します
主治医からの指示に従い調整された抗がん剤を投与します
副作用の出現の有無についてお尋ねします
外来化学療法室での抗がん剤投与中、もし異常を感じたらお伝えください
ご自宅ででも、もし副作用が出現したり何か疑問が生じたらご相談ください
時間外の連絡先は彩の国東大宮メディカルセンター救急外来あてにお願いします。時間外の担当医が対応します
化学療法をうまく続けていくには
あなたの化学療法の目的を心に言い聞かせてください。そうすればつらい時も積極的な態度を失わせないでしょう
しっかり食べ続けましょう。組織の再生や元気の回復に体が食べ物を要求しています
ご自分の病気や治療についてできるだけ学びましょう。そうすれば未知のものに対する不安をなくし自分がコントロールしているという感覚を得ることができます
治療中は日記や予定表をつけましょう。行動や思考の記録は治療中の感情を理解し、医師や看護師に尋ねるべきことを思い出すのに役立ちます。また、副作用にどう対処していけば良いかを考える手がかりとなります
気分を楽にして。いつもほどあなたはエネルギーがないかもしれないのでできるだけ休息するようにしましょう。些細なことは気にせず一番重要なことだけに専念しましょう
新しい趣味に挑戦したり、新しい習い事を始めましょう
もしあなたができそうで、主治医も同意するなら運動しましょう。体を動かすことは気分を晴らせ、緊張や怒りの気持ちをほぐし、食欲もわかせます
化学療法をおこなう私たち医師の姿勢
化学療法は私たち医師のためにあるのではありません
がんを患っているあなたが納得できる最良の化学療法を相談の上、選択したいと思っています
我々が目指しているのは厳密に言えば治療効果ではなくあなたの満足度を上げることです
満足度は治療効果が良いことと同一のことが多いですが、ひどい副作用のため治療効果が劣る方法を取ることもまれではありません
この判断は個人個人の価値観により、治療方法の選択にはひとつの解答はありません
治療されるあなたご自身が治療の主導権を握っており、我々は専門家として相談にのり助言をおこないます
どういう時に病院に連絡しますか?
以下のような副作用が出現した時は電話でご相談ください
38度をこえる高熱
下痢が24時間以上続く、または1日7~8回出現
から咳が続く、動くと息苦しい
黒い便、赤い便が出た
尿の量が少ない日が続く
吐き気が強く食事がほとんど取れない3日以上続く
体に皮疹が多数出現
鼻血が止まらない、赤あざがたくさんできる
その他、何かこれはおかしいと感じたらご連絡ください
連絡先はここです
彩の国東大宮メディカルセンター 外科外来 【電話】048-665-6111
彩の国東大宮メディカルセンター 時間外救急受付 【電話】(同上)