診療科

副腎腫瘍

副腎とは左右の腎臓の上に存在する10g前後の小さな臓器で皮質と髄質という部分からなっています。人間が生きていくために必要なホルモンを分泌していて、皮質からは主にアルドステロン、コルチゾール、アンドロゲン、髄質からは主にアドレナリンとノルアドレナリンというホルモンが分泌されています。これらのホルモンの分泌量は複雑な調節をうけており、必要十分な量が過不足なく分泌されるよう調節されています。
副腎に発生した腫瘍を副腎腫瘍といい、腫瘍からホルモンを自律的に(勝手に)分泌しているかどうか、良性か悪性かでいくつかに分類されています。

クッシング症候群

副腎皮質から分泌されるコルチゾールというホルモンが慢性的に過剰分泌されることにより様々な症状を引き起こす疾患です。クッシング症候群にはいくつもの病型(種類)があり、その一つが副腎腫瘍によるものです。

この病気の患者さんの男女比について

わが国のクッシング症候群の全国推計患者数は1250例(1997年)でそのうち47.1%が副腎腫瘍によるものでした。男女比は1:3.9と女性に多く、平均年齢は男性45.9歳、女性46.4歳でした。
ほとんどが良性の腺腫で約1%が副腎癌といわれています。

原因について

原因として、クッシング症候群を引き起こす副腎腫瘍ではPKA catalytic alpha subunit遺伝子(PRKACA)の活性型変異、PKA regulatory subunit 1-alpha遺伝子(PRKAR1A)の非活性化変異が指摘されており、クッシング症候群の発生との関連が推測されていますが、いまだ未確定です。

症状について

コルチゾールは生命維持に必須のホルモンですが、慢性的な過剰分泌により様々な症状をきたします。クッシング徴候と呼ばれる特徴的な身体所見として、

①満月様顔貌(顔が丸くなる)
②水牛様肩(背中の上部に脂肪が蓄積する)
③中心性肥満(体幹部は肥満を呈し、四肢は細い)
④(皮膚症状)赤色皮膚線条(皮膚に赤い筋が現れる)
⑤(皮膚症状)皮下出血斑

そのほか、高血圧、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、月経異常、精神症状(人格変化、抑うつ、不眠など)、易感染性などがあります。
副腎癌ではにきび、多毛などの男性化徴候を認めることもあり注意が必要です。高血圧、糖尿病、脂質異常症などに起因する心血管系合併症(心筋梗塞、脳梗塞など)が主な死亡原因といわれています。

診断について

診断にはCT、MRIやアドステロールシンチグラフィなどの画像検査とホルモン検査を行います。副腎に腫瘍を認め、コルチゾールの過剰かつ自律性の分泌が確認できれば副腎腫瘍によるクッシング症候群と診断します。

治療について

治療は腫瘍摘出術が一般的です。当院では腹腔鏡下副腎摘除術を施行していましたが、2022年4月よりロボット支援副腎摘除術が保険適用となったため、ダビンチを用いたロボット手術を施行することが可能となりました。

ダビンチ手術はどんな手術?

サブクリニカルクッシング症候群

サブクリニカルクッシング症候群とは副腎に腫瘍が存在し、腫瘍からコルチゾールの自律的な分泌を認めるものの、クッシング症候群に特徴的な身体的徴候を伴わないという疾患です。

頻度とリスクについて

海外の報告では偶然発見された副腎腫瘍のうち、サブクリニカルクッシング症候群の頻度は1.1~29.1%(平均9%)と報告されています。まれにクッシング症候群へ移行することがあり、その頻度は0~12.5%と報告されています。
コルチゾールの自律的分泌の程度はクッシング症候群に比べて弱く、クッシング徴候もありませんが、コルチゾールの慢性的な過剰分泌により高血圧や糖尿病、脂質異常症、全身性肥満などを高頻度に合併します。これが将来的な心筋梗塞・脳梗塞などの心血管系合併症のリスクとなります。

治療について

治療は腫瘍を摘出することにより高血圧や糖尿病などが改善することが多いため、血圧や血糖値のコントロールが悪い場合には手術が推奨されますが、絶対的な基準はなく経過観察が選択されることもあります。経過観察する場合には①高血圧や糖尿病などの合併症の進行、②クッシング症候群への移行、③腫瘍の増大等を慎重に観察していく必要があります。
手術が選択された場合、当院ではダビンチを用いたロボット手術を施行することが可能です。

原発性アルドステロン症

副腎皮質から分泌されるアルドステロンというホルモンが慢性的に過剰分泌されることにより高血圧を引き起こす疾患です。一般的な高血圧(本態性高血圧)に比べ、脳血管障害や心肥大などの心血管系合併症の頻度が高いといわれています。
これまで原発性アルドステロン症はまれな内分泌性高血圧と考えられていましたが、近年の報告では高血圧患者の3~20%と決してまれな疾患ではないことが明らかになっています。

病型について

原発性アルドステロン症にはいくつもの病型があり、わが国の2013年の報告ではアルドステロン産生腺腫が67.2%、特発性アルドステロン症が20.4%と大半を占めました。ごく稀ですがアルドステロン産生副腎癌も報告されています。

原因について

原因としていくつかの遺伝子異常が報告されています。アルドステロン産生腺腫ではKCNJ5遺伝子、ATP1A1遺伝子、ATP2B3遺伝子などの異常が指摘されており、家族性高アルドステロン症1型ではCYP11B1/B2のキメラ遺伝子変異、家族性高アルドステロン症3型ではKCNJ5遺伝子の異常が原因といわれています。

特徴と検査について

高血圧が特徴ですが、原発性アルドステロン症患者の高血圧は若年性で治療抵抗性なことが多く、心血管系合併症を引き起こすリスクも高いといわれています。
日本内分泌学会や日本高血圧学会では、①低カリウム血症合併例、②若年者の高血圧、③Ⅱ度以上(中等症・重症)の高血圧、④治療抵抗性高血圧、⑤副腎偶発腫瘍を伴う高血圧、⑥40歳以下での脳血管障害発症例は原発性アルドステロン症のリスクが高いためスクリーニング検査の対象としています。米国内分泌学会では睡眠時無呼吸症候群や近親者に原発性アルドステロン症患者がいる場合も検査を推奨しています。しかし、これらに当てはまらない患者も多いことから、日本内分泌学会ではできる限り全高血圧患者にスクリーニング検査を行うことを推奨しています。
スクリーニング検査として、アルドステロンとレニンというホルモンの比を用います。血液検査で調べることができます。スクリーニング検査で原発性アルドステロン症が疑われた場合には機能確認検査として、カプトプリル負荷試験や生理食塩水試験、フロセミド立位負荷試験など行います。原発性アルドステロン症と診断された場合には、CTや副腎静脈サンプリングという検査で片側の副腎からアルドステロンを産生しているのか、両側からなのかを調べます。

治療について

治療は、片側病変では副腎摘出術、両側病変では薬物療法が基本です。
当院ではダビンチを用いたロボット手術を施行することが可能です。

褐色細胞腫

アドレナリンやノルアドレナリンをはじめ各種の生理活性物質を産生し、多彩な症状を引き起こす腫瘍です。多くは副腎に発生します(副腎以外に発生したものをパラガングリオーマと呼ぶこともあります)。

厚生労働省「褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」班が2008年から2009年にかけて実施した疫学調査では推計患者数は2,920例でそのうち320例(11.0%)が悪性でした。男性47.1%、女性52.9%で、推定発症年齢は10歳以下から80歳以上まで幅広く分布していましたが全体の約50%を50歳未満の若年者が占めました。副腎発生が82.7%、家族性が良性の10.6%、悪性の6.6%、副腎発生のうち両側性が11.4%、多発性が11.3%でした。

原因について

原因として遺伝性のバックグラウンドを30~40%に認めるといわれており、原因遺伝子は19種類以上報告されています。

症状について

症状は高血圧、動悸、頻脈、胸痛、頭痛、顔面蒼白、発汗、不安感など多彩です。高血圧には持続型のほか、突然血圧が上昇する発作型、両者の混合型があります。また、褐色細胞腫には糖尿病などの糖代謝異常、脂質代謝異常の合併が多いことが知られています。不整脈や虚血性心疾患、脳血管障害などの心血管系合併症により突然死することもあります。一方で全く症状のない無諸侯性も3割程度認め、偶然見つかった副腎腫瘍(副腎偶発腫瘍)の5〜10%が褐色細胞腫といわれています。

検査方法について

褐色細胞腫が疑われた場合にはホルモン検査とCT、MRIやMIBGシンチグラフィなどの画像検査を行います。

治療について

治療は手術による腫瘍の摘除が第一選択です。褐色細胞腫は他の副腎腫瘍と比較し大きな腫瘍が多いこと、周囲と癒着している症例が多いこと、出血が多いことなどから技術的に難易度が高くなります。また、術前の血圧や血液量、血糖値のコントロール、術中の血圧・心拍数などの管理、術後の血圧、血糖値のコントロールが非常に重要となります。当院では内分泌代謝内科、麻酔科、集中治療科と協力し、万全な体制で手術を行っています。当院ではサイズが非常に大きくなければダビンチを用いたロボット手術を施行することが可能です。

非機能性腺腫

症状について

症状がなく、人間ドックのCT検査や超音波検査でたまたま見つかった副腎腫瘍を副腎偶発腫瘍と呼びます。比較的頻度は高く、CTなどの画像検査を行うと約4%に副腎偶発腫瘍を認めると報告されています。また年齢とともにその発症頻度が増えることが知られており、剖検(解剖)症例では約7%に副腎腫瘍が指摘されると言われています。

副腎偶発腫瘍のうち、ホルモンを産生していない腫瘍を非機能性腺腫といいます。平成11年度より厚生労働省「副腎ホルモン産生異常に関する研究班」で副腎偶発腫瘍についての疫学調査が5年間行われました。その結果3,678例中、ホルモン非産生腺腫(非機能性腺腫)が50.8%と半数以上を占めていました。

治療について

画像検査でサイズが大きかったり、悪性が疑われる場合には手術で摘出します。サイズに関しては絶対的な基準はありませんが、おおむね4㎝を超えるようならば悪性を疑います。悪性を疑わせる所見がなければ経過観察となります。経過観察中にホルモン異常が出現したり、増大傾向があり悪性が疑われたりする場合には摘出術を行います。 当院ではダビンチを用いたロボット手術を施行することが可能です。

副腎癌

発生率は100万人当たり1-2人と非常にまれな疾患です。10歳未満の小児や30-40歳代で発生率が高いといわれています。

症状について

60-70%でコルチゾールや男性ホルモン(アンドロゲン)などのホルモンを産生しており、高血圧、糖尿病、脂質異常症、易感染性などのほか、男性化徴候を認めることもあります。特徴的な症状はなく、腫瘍が進行して大きくなることによるおなかの張りや産生しているホルモンによる症状がメインとなります。

治療について

治療は手術で腫瘍を完全に切除することですが、発見されたときにはすでにまわりの臓器に進行していたり、ほかの臓器に転移していたりすることが多く手術ができないことも珍しくありません。その場合は薬物療法の適応となります。
手術ができる場合は腫瘍のサイズやまわりの臓器への進行状況で手術法を決定します。

担当医

科長 佐藤 克彦(さとう  かつひこ)

科長  佐藤 克彦(さとう かつひこ)

【資格】

医学博士
日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医
日本内視鏡外科学会技術認定医(泌尿器科腹腔鏡)
日本泌尿器科学会/日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会腹腔鏡技術認定医
日本泌尿器科学会/日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器ロボット支援手術プロクター(膀胱・前立腺、副腎・腎(尿管)、仙骨腟固定術)
身体障害者福祉法第15条指定医師(ぼうこう又は直腸機能障害)
厚生労働省 医師の臨床研修に係る指導医講習会修了
厚生労働省 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
難病指定医
da Vinci Console Surgeon(da Vinci Certificate 取得者)

診療顧問 岡田 栄子(おかだ  えいこ)

診療顧問  岡田 栄子(おかだ えいこ)

【資格】

日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医
透析バスキュラーアクセスインターベンション治療医学会VAIVT認定専門医
透析バスキュラーアクセスインターベンション治療医学会VAIVT血管内治療医
日本医師会認定産業医
身体障害者福祉法第15条指定医師(じん臓機能障害)
日本透析医学会会員
日本排尿機能学会会員
日本臨床皮膚外科学会会員
日本透析アクセス医学会会員
厚生労働省 医師の臨床研修に係る指導医講習会修了
厚生労働省 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
難病指定医
日本救急医学会 ICLS コース修了
da Vinci First Assistant

副科長 五十嵐 智博(いからし  ともひろ)

副科長  五十嵐 智博(いからし ともひろ)

【資格】

医学博士
日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医
日本内視鏡外科学会技術認定医(泌尿器科腹腔鏡)
日本泌尿器科学会/日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会腹腔鏡技術認定医
日本泌尿器科学会/日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器ロボット支援手術プロクター(膀胱・前立腺、仙骨腟固定術)
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
身体障害者福祉法第15条指定医師(ぼうこう又は直腸機能障害)
日本レーザー医学会 安全教育試験合格
厚生労働省 医師の臨床研修に係る指導医講習会修了
厚生労働省 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
難病指定医
da Vinci Console Surgeon(da Vinci Certificate 取得者)

 伊藤 亜希子(いとう あきこ)

伊藤 亜希子(いとう あきこ)

【資格】

日本泌尿器科学会泌尿器科専門医・指導医
日本泌尿器科学会/日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器ロボット支援手術プロクター(仙骨腟固定術)
厚生労働省 医師の臨床研修に係る指導医講習会修了
厚生労働省 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
難病指定医
身体障害者福祉法第15条指定医師(ぼうこう又は直腸機能障害)
da Vinci Console Surgeon(da Vinci Certificate 取得者)

 眞弓 翔三朗(まゆみ しょうざぶろう)

眞弓 翔三朗(まゆみ しょうざぶろう)

【資格】

日本泌尿器科学会泌尿器科専門医
日本泌尿器科学会/日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器ロボット支援手術プロクター(膀胱・前立腺)
難病指定医
厚生労働省 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了
da Vinci Console Surgeon(da Vinci Certificate 取得者)

 三津井 理公(みつい りく)

三津井 理公(みつい りく)

外来担当医

泌尿器科の午前の受付は11:30までとなります。
ご了承くださいますようお願い申し上げます。

時間/曜日
午前受付
8:00 〜 11:30
(診察)9:00 ~
【新患対応】 
飯泉 達夫

【新患対応】 
三津井 理公

【再診予約制】 
佐藤 克彦
五十嵐 智博
岡田 栄子
眞弓 翔三朗
【新患対応】 
倉内 崇至

【再診予約制】 
飯泉 達夫
【新患対応】 
芦苅 大作

【再診予約制】 
伊藤 亜希子
佐藤 克彦
飯泉 達夫
【新患対応】 
三津井 理公

【再診予約制】 
五十嵐 智博
岡田 栄子
【新患対応】 
眞弓 翔三朗第1・3・5週
伊藤 亜希子第2・4週

【再診予約制】 
眞弓 翔三朗第2・4週
伊藤 亜希子第1・3・5週
五十嵐 智博第1・3・5週
佐藤 克彦第2・4週
午後受付
12:35 〜 17:00
(診察)14:00 ~
【再診予約制】 
検査・処置のみ
【再診予約制】 
検査・処置のみ
【再診予約制】 
検査・処置のみ
【再診予約制】 
検査・処置のみ
【再診予約制】 
検査・処置のみ