診療科

膵がんの手術療法について

膵頭十二指腸術とは

 リンパ節郭清を必要とする膵頭部癌や、膵腫瘍・胆管腫瘍・乳頭部腫瘍に対して行われます。当施設では、胃の大部分が温存される亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を主に行っています。胆嚢、胆管、胃の一部(あるいは十二指腸)、十二指腸~空腸の一部を切除し、周りのリンパ節も一緒に郭清(かくせい)してきます(切除)。食事や膵液、胆汁の通り道を作りなおすため3か所の消化管吻合を行います(再建)。超高齢や透析中などのリスクが高い方の場合、小腸同士の吻合(ブラウン吻合)や腸瘻造設を追加する場合があります。

膵空腸吻合について

 吻合のうち最も重要な吻合です。膵臓の中を走る主膵管と空腸を、拡大鏡を用いて極めて細い糸で8~14針程度縫い合わせ(吻合)、膵臓で産生される膵液の通り道を作り直します。細い分枝膵管は熱あるいは縫合で閉鎖してきます。

※膵管チューブ(ステント)について
膵空腸吻合部には主膵管の太さに応じて膵管チューブを留置します。
内ステントとして吻合部に留置する場合と、外ステントとして体外にチューブを引き出す場合があります。内ステントは便として排出されますが、吻合部にそのまま残ることがあります。外ステントは術後2週間以降に抜去します。

門脈合併切除再建について

 腫瘍が門脈へ浸潤したり、浸潤が疑われる場合に、門脈を腫瘍と一緒に切除し、血行再建を行います。

追加切除/周囲臓器合併切除について

 癌をすべて取りきるために、術前の検査によって癌の進展度を評価し、膵臓や胆管の切離位置を決定しています。しかしながら、術前画像では評価困難な微小な癌が想定広がっていることがあります。そのため、切除断端に癌が残っていないか術中迅速組織診断を行い、陽性(癌が残っている)場合には、胆管や膵臓の追加切除を行うこととなります。

結果として下記のような追加切除が必要になることがあります。

  • 膵全摘術(膵臓と脾臓を全て切除し、胃の一部を切除します)

また周囲の臓器に癌の浸潤が疑われる場合には、それらの臓器(大腸、血管、副腎、神経叢など)を合併切除することがあります。

膵体尾部切除術とは

 リンパ節郭清を必要とする体部・尾部の膵癌に対して行われます。まわりのリンパ節を一緒に郭清(かくせい)するため、脾臓も一緒に切除することとなります。また、腫瘍の状況によって周囲の臓器(胃、結腸、副腎など)を合併切除することがあります。膵臓の切離は、ステイプラーと呼ばれる認可され広く使用されている金属性の医療用ホッチキスで行います。リンパ節郭清を要しない場合に、脾臓を温存する術式があります。

ダビンチ手術の取り組み

 当院では、低侵襲手術として手術支援ロボットダビンチによる膵切除術を導入しております。ロボット手術は、開腹手術と比較して傷が小さく回復が早いことはもちろん、3D高画質による拡大視効果によってこれまで認識されてこなかった微細解剖を意識したよりきれいで安全な手術が可能となり、腹腔内の精緻な切開や剥離操作、運針などのロボットならではの鉗子操作が可能となります。膵がんでは補助化学療法が予後の改善に重要なため、ロボット手術のメリットは、安全で確実な切除と早期の回復が得られる点です。
 一方で、開腹手術、腹腔鏡下手術そしてロボット手術はいずれもアプローチの違いに過ぎず、現在開腹手術よりも有用性が広く示されているロボット手術の術式は限られていることに注意が必要です。ロボット手術をすればよいのではなく、集学的治療のひとつのオプションとしてロボット手術を活用しています。
 当科では、膵がん根治による病気の克服を最大の目的ととらえ、患者さん一人ひとりに応じた適切な選択肢をキャンサーボード(多職種会議)で相談し、ご提案させていただきます。

手術支援ロボット「ダビンチ」について詳しく知りたい

当院で実施しているロボット手術

そのほかの膵切除術

  • 膵全摘術とは

 腫瘍が膵全体(頭部から尾部)に及ぶ場合、根治のためにやむを得ず膵臓をすべて切除する必要があります。胆管、胆嚢、脾臓、十二指腸、胃と空腸の一部を切除することとなります。胆管と空腸、胃(十二指腸)と空腸の2か所の吻合となります。

  • 膵中央切除術とは

 腫瘍が膵の中央にあり、リンパ節郭清を必要としない病変の場合に膵臓をできるだけ温存するために行います。膵頭部側はステイプラーで切離し、膵尾部側は膵空腸吻合を行い、ステントを留置します。

※膵管チューブ(ステント)について
膵空腸吻合部には主膵管の太さに応じて膵管チューブを留置します。