診療科

病理診断科

診療科紹介

病理学(びょうりがく)とは、病気の原因、発生機序の解明や病気の診断を確定するのを目的とする医学の一分野です。当院の病理診断科では、患者様から採取された細胞、組織臓器を、顕微鏡などを用いた検査によって、それらにみられる形態的変化を解析し、その病変の最終診断を行っています。

当院の病理診断科は、常勤病理医1名で外科病理診断、迅速術中診断、免疫組織学的診断、ウィルス検査、解剖等の日常業務を行っています。平成26年度は各種臓器の生検等の診断を2,200例、手術摘出材料の組織検索374例(主な臓器で大腸90例、胃45例、乳腺36例、肝臓15例、小腸14例、食道4例、etc.),術中迅速診断60例、免疫組織診断190例、遺伝子検査42例,組織感染症検索8例を行いました。術中迅速診断は事前予約を基本としていますが、術者が術中に要請された場合にも可能な限り対応出来る体制を整えています。また臨床病理症例検討会を3回行い、臨床と病理診断科で活発な意見交換を行っております。

【臨床病理症例検討会の開催実績】
【臨床病理症例検討会の開催実績】

担当医

科長 小川 史洋(おがわふみひろ)

科長  小川 史洋(おがわふみひろ)

【資格】

日本病理学会病理専門医研修指導医
日本臨床細胞学会細胞診専門医・指導医
日本臨床細胞学会教育研修指導医
日本病理学会病理専門医
死体解剖資格認定
死体検案研修会修了
厚生労働省 医師の臨床研修に係る指導医講習会修了
難病指定医

胃生検について

胃生検とは消化器内視鏡にて行われる検査法で、胃粘膜の一部を切り取って病理組織学的に診断するたいへん正確な診断法です。胃生検は、内視鏡を口腔から挿入し、肉眼的に病変が疑われる領域を生検鉗子で2ミリ程度の胃粘膜を確実につまみ採る方法です。この生検は、病変が良性あるいは悪性であるかの鑑別のためには、なくてはならない診断法です。また、良性の炎症性変化であったとしても、その炎症を来たした原因をある程度類推することが出来ます。現在患者様が服用されている薬剤による副作用、ストレス性潰瘍、あるいはピロリ菌による胃炎等の判断を行います。その様な解析を行うことで、患者様にとって最も有効な治療に結びつける研究を日々行っているのが病理診断科の仕事です。

胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎などの多くは、ピロリ菌が原因で生じることが実証されており、抗生物質などを用いて除菌に成功すれば、再発率は著しく減少します。ピロリ菌の特徴は、壁細胞という胃粘膜の中にある細胞から分泌される強い塩酸の中でも生き延びられることです。我々が毎日摂取する食物には、ほとんど無害であるものの、多くの細菌が含まれています。ピロリ菌以外の多くの細菌は胃の強い塩酸でほとんど死滅してしまいますが、ピロリ菌は生き残れます。胃粘液の主成分であるムチンという糖タンパク質の分解産物を栄養源とし、粘液産生細胞の表面に付着して持続感染します。そしてピロリ菌に感染した胃には、好中球やリンパ球といった白血球が活性化されて多数出現してきます。主にこの活性化された好中球から活性酸素が発生し、胃粘膜を破壊し、慢性胃炎、胃潰瘍へと病変が進んでいきます。

慢性胃炎は、何年、何十年という長い経過をとってゆっくりと進行していく疾患ですが、進行していくに従って萎縮性胃炎(写真1)、そして胃の上皮が腸の上皮に置き換わる腸上皮化生(写真2)という現象を引き起こします。ピロリ菌(写真3)は胃の粘液細胞が産生する粘液のみを栄養源としているので、この腸上皮化生を起こした部分ではピロリ菌は認められなくなります。しかし、この腸上皮化生は胃癌の発生に関わっていることが証明されています。そのため、経過観察が必要となり、早期に癌が病理学的に見つかれば、内視鏡的粘膜切除術により治療することも可能なこともあり、不必要な拡大手術をしなくともよいということになります。

病理診断は専門性の高い医療行為であるため、病理専門医によって行われます。病理検査の結果で、その後の治療方針が大きく変わるケースがあるのですが、病院に病理常勤医を雇用し、経済性を犠牲にしてでも質の高い医療を行おうとする病院は現在日本には極めて少なく、また、日本の病理専門医は2千数百名程で先進国の中で人口10万に対する病理医の数は日本が最も少ないのが現状です。